BLOG 私的曲目解説

◆2023年3月5日(日) 第22回むさしの会演奏会◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演14時00分

曲目解説 <田中晴子>


幼子イエスに注ぐ20の眼差し より  

Vingt regards sur l'enfant - Jésus

オリヴィエ·メシアン 作曲


オリヴィエ·メシアン 1908~1992

この曲は1940~44年の間、ドイツナチスの占領下にあったパリにて作曲されたメシアンの代表作とも言われる作品。

初演は、パリ開放後の翌年1945年に迎える事となる。

構成は最終的には、20と言う数の様々なまなざしが収まる事となる。

そして全曲の演奏には、2時間ほどかかると言う大作となった。

メシアン独自の作曲技法などは、この作品において完成されたと見られ、この曲はメシアンのピアノ作品の代表作とも言われる。

20世紀の産んだ最高の知性の一つとも言われる作曲家メシアン、彼自身は敬虔なクリスチャンでもあった。


1:父なる神の眼差し  Regard du Père

神の主題とされる美しい和声進行。付加音により複雑な味わいを持つ。そして色彩は、ステンドグラスの様な神秘的な光を放つ。


2:星の眼差し  Regard de l' étoile

coup de grâce 恩寵の衝撃と言われる一撃で開始される。これは仏語では、止めの一撃との相反する意味を持つが故に、この曲集全体の底に流れる明晰さの中の不可思議さが、ここに既に暗示されているのではないだろうか。その後、不気味な星と十字架の主題が音域の離れたユニゾンで示される。


4:聖母の眼差し  Regard de la Vierge

内声に隠れる様に、優しくナイーヴな聖母の主題が提示され、何度も繰り返される。その間に、全く異質な性格のテーマが挿入され、まるで波乱に満ちた未来が予見されるかのようだ。



◆ 2021年2月23日(火・祝) 第21回むさしの会演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演15時30分

曲目解説 <田中晴子>


D.スカルラッティ ソナタ K.54 (L.241) イ短調

生涯に555曲の1楽章形式のソナタを作曲したスカルラッティだが、この曲は速いテンポで展開する中に、一抹の幽愁と憧れ、さらには激しさなど、様々な感情を合わせ持つ一曲となっている。技術的にも、度重なる腕の交差、オクターヴ奏法など鍵盤楽器の華やかな奏法が見られる。


C.ドビュッシー プレリュード集 第2巻より「水の精」「交替する3度」 第1巻より「沈める寺」

ドビュッシーは前奏曲集を2巻作曲し、それぞれが12曲からなる24曲で構成される。

・オンディーヌは、ご存知、水の精の事である。人を翻弄するかの様に姿を変えては戯れる。水底に誘われない様に、どうかご用心。

・交替する三度は、エチュードまがいの、完全に徹底して全曲が三度の音程で埋め尽くされて作曲されている珍しい一曲。これこそ自曲に表現できる奇譚と言うべき一曲ではないでしょうか。

・沈める寺は、フランスに古くから伝わる、海に消えた街イスの伝説や、あの有名なモン・サン・ミッシェルの寺院を思い浮かばせる。海の底に沈んだのは幻だったのか。いやそれでも人々は、鎮魂の鐘を鳴らし、歌を歌う。



◆ 2019年3月3日(日) 第20回むさしの会演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演14時

曲目解説 <田中晴子>


バッハ 平均律曲集 第Ⅰ巻より プレリュード 変ホ短調、変ロ短調 

両プレリュードとも感情表現の豊かさ、深さにおいて平均律曲集の中でも傑出している。変ホ短調の曲は、冒頭、詩的な問いかけが、揺らめきながらも進むにつれ、やがて表現は厳しいものとなり、劇的な転調の後、静かに解決に至る。変ロ短調の曲は、宗教色が濃い作品。複雑な多声のドラマが、ベースの淡々とした歩みの上に繰り広げられる。


ラベル 夜のガスパール より オンディーヌ 

フランスの詩人ベルトランの詩集「夜のガスパール」から着想を得て作曲された同名の曲集の第1曲である。この曲は不思議にもほぼ忠実に詩の内容の進行に沿って書かれていると言われている。

水の精オンディーヌは雨となり窓ガラスをたたく。男に私と一緒に湖の底深く来て下さい。そこで私と結婚して王になって下さいと誘う。男は、「自分は、死すべきである事を愛す」と言って断わる。オンディーヌは涙を少し流すが、悲鳴の様な笑い声と共に消える。

 

◆ 2018年4月14日(土)リサイタル 曲目解説 ◆

   茶の蔵かねも「ティーカルチャーホール」  開演15:30


          プログラム

Baroque à la carte 

J.S.バッハ   平均律クラヴィーア曲集Ⅰ巻プレリュード 1番ハ長調

J.Ph.ラモー  クラヴサン曲集 より

        エンハーモニック      L’enharmonique

        エジプト風(エジプトの女)    L’egyptienne

J.S.バッハ   平均律クラヴィーア曲集Ⅱ巻プレリュード 7番変ホ長調

                  Ⅰ巻プレリュード 17番変イ長調

D.スカルラッティ  ソナタ 二短調 L.422

J.S.バッハ   平均律クラヴィーア曲集Ⅰ巻プレリュード 21番変ロ長調

J.Ph.ラモー  クラヴサン曲集 より

         一眼巨人たち        Cyclopes

W.A.モーツアルト ソナタ ハ長調 K.330  

          第1楽章 Allegro moderato

          第2楽章 Anfante cantabile

          第3楽章 Allegro


        <休憩>


F.ショパン 12の練習曲 Op.25 より

        第1番 変イ長調(エオリアンハープ あるいは 牧童)

        第2番 へ短調

      バラード 第1番 Op.23 ト短調

C.ドビュッシー 前奏曲集 第2巻 より

         ヴィーノの門(ぶどう酒の門) La puerta del Vino

         月の光が降り注ぐテラス    La terrasse des audiences du clair de lune

ベルガマスク組曲 より

         月の光  Clair de Lune


【曲目解説】

バッハへの手紙

この度、あなた様の作品をほんの少し、小リサイタルにて弾かせて頂くにあたり、ご挨拶申し上げます。

なんてまどろっこしい事は、いっさい省略致しまして正直にお話し致します。だってあなたは音楽の母です。本心を隠したって見抜きます。

あなたのおかげで、私はずいぶんと苦労致しました。でも、大好きなんです。あなたの作品をああ弾けこう弾けと言われると私はいやです。一番大切なところが見えなくなり自分を見失うからです。ただ私はこう弾きますと断言できません。日々刻々と変わるので。まったく正反対の表現もあり得ます。

ですのでリサイタルで弾くと決めて今日まで、まるで命綱なしの宇宙遊泳のようでした。

あなたの音楽は、それ程までに、人間の感情の細かなものから深いものまでも飲み込めるすべてを持っています。

本日のプログラム、、Baroque à la carte として、同時代の大作曲家、ラモー、スカルラッティにも助けてもらい、私のストーリーで組み立てました。勝手な事をしてすみません。でも、大好きです。


ラモー 

エンハーモニックは異名同音という意味。斬新な和声、思わぬ形に変異していくものはいったい何なのか。エジプト風はエジプト絹という意味もあります。こちらは打って変わり同じト短調なのに気持ちに直に訴える曲。一眼巨人たちはギリシャ神話に登場する神の一人。鍛冶を生業とし、絵画では粗暴な怪物に扱われもするが、妖精に恋もする。フランス語で大仕事をするいう表現でこのCyclopeの単語を使います。究極の大仕事とは何かと考えました。何かを創造する、生命を吹き込む事でしょうか。


スカルラッティ 

連打で始まる印象的なこの曲、最後はスペインで暮らした彼だから、フラメンコと思うかもしれないけれど、弾いているうちに違う世界が見えてきます。私はこの曲に命綱が必要なくらいの勇気を感じます。


モーツアルト

運命の女神フォルトゥーナが仕事をする時、運命が定まらない事を象徴する不安定な球体に乗っているという。

自分の人生を手玉に取る事もできるフォルトゥーナにモーツアルト自身はどこかで会ったのかも知れない。恐いもの知らずのモーツアルト、その時、何を女神と話したのだろうか。

---------休憩---------

ショパン

エチュードとは練習曲という意味だが、その言葉通りに味気ないものでは決してない。ある音型を徹底的に使い切るという作曲の方法を使いながらも、それでいて何か心象風景というか物語を感じさせる美しさがある。

バラード第1番はショパン20代前半でパリにて作曲。自由なソナタ形式。暗示的な冒頭、憂いを帯びた第1主題、憧れに満ちた第2主題。コーダの激しさは、いったい何が彼の逆鱗に触れたのかと思う。このコーダ、ショパンが<ダンスマカーブル>(死の舞踏)を作曲したのなら、これではないかと思う。踊ったのはいったい誰。


ドビュッシー

前奏曲集は第1巻、第2巻とあるが、どの曲も題名は曲の最後に暗示的に示すのに留める。あまり題名にとらわれてほしくなかったのだと思う。

ヴィーノの門とはアルハンブラ宮殿の入口にあるぶどう酒の門の事。この曲を通してずっとハバネラのリズムが低音で響いている。ただ時々、皮肉な邪魔が入り、調子が狂ってしまうが。

月の光が降り注ぐテラスは、とても神秘的な雰囲気の曲で、ドビュッシーの音の世界の新骨頂とも思える。しかし、西洋ではlune(月)と言うと、現実離れしているとか、不可能な事とかを意味する場合もあり、そんな意味もどこかに秘められているのかも知れない。日本で言うなら、かぐや姫が竹から生まれて月に帰るという夢の様な話でしょうか。

月の光は、説明がいらないほど美しい曲。きっとかぐや姫は、こんなお迎えが来て月に帰っていったのではないかしら。



◆ セントラル愛知交響楽団  コンチェルトシリーズ No38 ◆

2015.7.28

いよいよ、毎年恒例のコンチェルトシリーズが開催されます。

指揮は昨年に引き続き、当団指揮者の角田鋼亮が務めます。

出演されるピアニストの皆様からコメントが寄せられましたのでアップします。


【出演者からのコメント】

田中晴子(モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595)

 音楽の表現とは、自分で食べて消化したものが体となり力となるように、自分で経験して昇華したものが音楽となると思っています。モーツアルトの音楽はシンプルなだけに、表現しようとするものを明確にもって演奏しないと、とても空虚なものになってしまう。その表現、イメージの世界の扉をしっかりと見つけ、その時にその扉を開けて中に入れる事を切に願って演奏したいと思います。

【曲目解説(モーツアルト ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595)】


【構成】

 第1楽章 Allegro 変ロ長調 4/4 ソナタ形式。装飾的なターンの印象的な第1主題、子供のあどけない問いのような第2主題。古典の時代なのに、さりげなく斬新な転調が隠されているせいだろうか、なぜか不思議で、ラベルのオペラ「子供と魔法」の物語を私は思い出してしまう。

 第2楽章 Larghetto 変ホ長調 2/2 静謐な音楽、だけど思いがいっぱい。

 第3楽章 RONDO Allegro 変ロ長調 6/8 ロンド形式。軽快なロンド主題は同年に歌曲K.596「春への憧れ」に転用された。

第1楽章、第3楽章のカデンツはモーツアルト自身のものが残されているのでそれを演奏。第3楽章中に2ヶ所のアインガング(無伴奏の即興部分)がある。短い方は演奏しない奏者もいるが、今回は田中晴子のアドリブです。

モーツアルト最期の年1791年1月作曲。その年の12月に未完のレクイエムを残して死んでしまう。

晩年膨大な借金に追われ、以前は年に何回も入っていた予約演奏会も三年以上もない困窮した状況。ピアノコンチェルトの作曲は以前、一年に何曲も作曲していたが、三年ぶり。オーケストラの編成も非常に小規模となっている。

結局これが、コンチェルトではあるが、最後のピアノ作品となってしまう。

【私的解説】

子供の頃からこの曲には何か遠い憧れのようなものがあって、とても弾きたいのだけれど手の届かない所にある気がして、手をださないでいた。10年以上前、ある事がきっかけで弾く気になり勉強した。今、冷静に考えてみると自分が本当に好きで、欲していたもので、その時の自分を打開しようとしたのだと思う。大変な時、複雑でむづかしい作品に向かう人もいれば、私はこんなシンプルな作品でよかったのだ。

フランスのポスト印象派画家のポール・ゴーギャンの大作に「われわれはどこから来たのか。われわれは何者か。われわれはどこへ行くのか。」というタイトルの絵がある。素晴らしいと思うが、その時、私がなぜこの曲を弾こうと思ったかを絵画に例えるならば、あたりまえの風景や一瞬の日常を描いた絵の中に、永遠の答えを描ける画家が描いた絵が私にはよかったと言えばよいのだろうか。

このコンチェルトは、三楽章構成だが、ゴーギャンのあの絵のタイトルの3つのフレーズをあてはめてみると、この順番ではなく、むしろ私は、われわれはどこから来て、どこへ行き、何者なのかという流れのような気がする。

なぜなら、モーツアルトがこの曲を作曲したその動機となるアイデアが、どこへ行くより、それが何者であるかを知りたかったからではないかと私は感じるからだ。

簡単に言ってしまうと、あなたは一体誰?という事になるかもしれない。

【本番演奏】

セントラル愛知交響楽団 主催公演

コンチェルトの夕べ

  愛知県芸術劇場コンサートホール

  指揮 角田鋼亮

  ピアノ独奏 田中晴子

  2015年7月31日

ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト

ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595 (1790)


◆ 2014年4月19日(土)リサイタルのプログラムのご挨拶 ◆

   カワイ名古屋 コンサートサロン「ブーレ」  開演18:30


本日は、お忙しい中をご来場頂き、誠に有難うございます。

今回は、バロックからフランス近代へと移行するほぼ300年の時の流れの中に生まれた作品逹を、流れに沿って(メシアンだけは時間が先に進みますが)演奏したいと思います。

バロックの時代は、鍵盤楽器でもピアノとは発音の機構が違うクラヴサンの為に作曲されているので、奏法的に工夫が必要です。

古典派の時代を何故か今回は、すっ飛ばし、近代との架け橋をショパン一人に無理を承知でお願いしました。

プログラム後半の近代は、ついこの間まで(没1992年)いらしたメシアン。プレリュード集は、私が少し、フランスものを教わった、アンリエット・P・ロジェ先生に献呈されてます。

ドビュッシーの作品は、極端な作品が並びます。片方、子供でも弾いていますが、他方は、何人か助っ人が欲しいところです。

作曲家逹が、大変な思いをして書いたのだなと、最近やっと後れ馳せながら思う様になりました。

楽しんで頂けましたら、幸いです。

                            C´est un joli programme.   Mais, c´est joli….


                                               プログラム

F.Couperin Les Lis naissans             クープラン ゆりの花ひらく

J.Ph. Rameau Le Rappel des Oiseaux       ラモー 鳥のさえずり

D.Scarlatti Sonata K.27 in h            スカルラッティ ソナタ K.27 ロ短調

Sonata K.380 in E                         ソナタ K.380 ホ長調

J.Ph. Rameau Sarabande             ラモー サラバンド

F.Couperin Les barricades misterieuses         クープラン 神秘の城壁

J.S.Bach   Choral prelude “Ich ruf’zu dir, Herr”        バッハ イエスよ、私は主の名を呼ぶ

F.Chopin Ballade No.4 Op.52            ショパン バラード 第4番

<休憩>

O.Messiaen Le colombe                  メシアン プレリュード集より 鳩

C.Debussy Children’s corner             ドビュッシー 子供の領分 より

- Doctor Gradus ad Parnassum                                      グラドゥス アド パルナッスム博士

- The little shepherd                  小さな羊飼い

- The snow is dancing                 雪は踊っている

  La fille aux cheveux de lin                                  プレリュード集 第2巻より

                                                        亜麻色の髪の乙女

L’Isle joyeuse                                              喜びの島


◆ 2017年2月26日(日) 第19回むさしの会演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

J.P.ラモー  クラブサン曲集より 一眼巨人たち 二短調 

ギリシャ神話に登場する単眼の巨人で神の一族、鍛冶を生業とする。文学では粗暴な怪物に扱われもするが、絵画では妖精に恋もしたりする作品も。曲中、足音の様な強力な伴奏低音、鍛冶の火花も見られる。だが私はラモーが巨人を描写した音楽とは到底思わない。仏語の言葉で“大仕事“を表す成句がこの隻眼巨人”Cyclope“の単語を使う。彼は4ページの作品で大変な仕事をした。例えば神様がアダムの肋骨からイブを創った様に、目に見えない音によって姿、形の見えない物、つまり生命あるいは死を作品に込めたのではと思うのは、私の考え過ぎだろうか・・・ 

F. ショパン バラード 第1番 ト短調 Op.23

ショパンのバラード第1番は、4曲ある中でも最もスリリングな内容と技術を持ち、劇的な変化を伴う構成となっている。この時期、彼はワルシャワを出てウィーン経由でパリに住み始めた。いったい何があったのかと思う激しさは、彼の逆鱗に触れる何かが起こったのかもしれない。もしパンドラの箱に最後に残ったのが希望なら良かったのだが、それは彼には違う何かだった。その何か、例えば悪魔あるいは死と対峙した結果生まれたのがこの作品ではないかと、私には思えてならない。


◆ 2015年3月1日(日) むさしの会演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

ドビュッシー 「映像」第2集より  そして月は廃寺に落ちる ”Et la lune descend sur le temple qui fut"

 なぜこの寺は廃れてしまったのかと思うほどの寂寥感の中、その物語をしっかりと見つめる厳しい眼差しも感じられる。遠くから童歌、ここは東洋なのか。平家物語の諸行無常の言葉が私の心に浮かぶ。


        同           金色の魚  "Poissons d'or"

 この魚は、もとは日本の漆器盆に金粉で描かれた錦鯉。厳しく辛い話はもう結構と伸びやかに泳ぎ回ります。ここは南のグレート・バリア・フリーでしょうか。気紛れに現れる人魚も参加したようです。私には、空想上の海への大冒険に思われます。


◆ 2011年2月27日(日) むさしの会 演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

バッハ(ブゾーニ編曲)  コラール前奏曲 ”私は主の名を呼ぶ” BWV 639 

                                           Chorale Prelude "Ich ruf zu dir, Hen Jesu Christ"

コラール前奏曲とは、本来教会の礼拝で歌うコラールの前に演奏されるオルガン曲。ブゾーニが編曲した版がピアノでよく演奏されるのも頷ける、美しいバッハの旋律。


F. ショパン  バラード 第4番 へ短調 Op.52 

ショパンの4曲のバラードの中で、この4番はあまり演奏されないのは、内容がとっても深刻で技術的にも難しいのに、10分で終わってしまうからだろうか。苦労の割に報いが少ない? 構成は自由なソナタ形式。序奏、捜し求めるような第1主、美しい第2主題の展開後、フーガの手法で再現部、コーダで激しく曲を締めくくる。 


◆ 2007年3月27日(日) むさしの会 演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  クリエート浜松 2F ホール 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

F. ショパン  練習曲 作品 25-1、2 / 夜想曲 作品 9-2 / 練習曲 作品 10-12 

ショパンは12曲で1組のピアノの為の練習曲を作品10と25の2つ作曲しており、作品10の方はリストに献呈されている。各曲はそれぞれテーマとなるテクニックを軸に作曲されているが中には数曲のゆっくりした音楽的な表現のための曲も含まれる。テンポの速い技術的に困難な曲達も、どれもショパンの音楽の多様な面を表わし、詩的な曲やドラマチックな曲など多彩である。1曲挟まれたノクターンはショパンの書いた最も甘美なメロディーの一つではないだろうか。


◆ 2005年2月27日(日) むさしの会 演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 音楽工房ホール(21音楽セミナー室) 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

シューベルト  4つの即興曲 Op.90、D.899 より No.3とNo.2

シューベルトの即興曲と言えばピアノを弾く方なら誰でもご存知の有名且つ平易な曲の感があります。派手な技術の少ない彼の作品は違う意味での技術、つまりスポーツ的技術では解決の難しい、音楽に根ざした技術を要します。音楽的にも実はシューベルトのすべてが凝縮された作品だと思います。豊かな感受性から湧く、美しいメロディーとそれを包む独特の和声、色彩。奥に潜む深遠な感情と突然の激情。 手に入らないものへの憧れ。


◆ 2004年2月29日(日) むさしの会 演奏会 ◆

  武蔵野音楽大学同窓会  静岡県支部西部むさしの会

  アクトシティ浜松 研修交流センター 21音楽セミナー室 開演14時


曲目解説 <田中晴子>

ハイドン  変奏曲 へ短調  Variation f moll Hob.xvll:6 (Sonata・Un piccolo Divertiment) / Haydn

ハイドンの作曲した変奏曲の中では、この曲は、後半の部分の幻想曲とも言える自由な部分と、そこにみられるハイドンにしては珍しい激しい表現で一種独特の地位を占めた曲となっている。フューネラル(葬送行進曲)とも思われる沈痛なアンダンテの主題から始まり、5つの変奏曲をへて再び最初の主題が現れてから曲をしめくくる最後までの3ページは、ハイドンの書いたものの中でも最高の3ページものの一つではないかと思う。温厚であったと言われるハイドンをここまで狂気にも近い激情に駆ったのは、いったい何であったのかと思うと興味深いものを感じる。

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